【舞台チャイメリカ】過去の栄光にしがみつく”破壊神”がここにいた。実力派俳優田中圭、舞台の空気を掌握した満島真之介【観劇レポ】

どうも!まもちゃです。

田中圭さん主演『チャイメリカ』を観劇してきました!
観劇後は、あまりの熱量と内容の重さに、息苦しくなる程の衝撃を受け帰宅する前にコーヒーブレイクを挟まないと立ちあがれない…。それほどまでにずっしりと重く胸を貫くような舞台でした。
感想を書いていきたいと思います。途中ネタバレがあり。お気をつけください。

世田谷パブリックシアター公式HPは⇒こちら

◆事前に知っていたほうが良いこと

舞台は、観ていれば話の内容を理解できるので、難しい勉強はしなくても楽しめます。基本だけおさえておいたら良いと思うので、下記の事だけ頭に入れておくとよいかもしれません。

<<電車の中で読めばOK>>
◆無名の反逆者(戦車男
)⇒wikiはコチラ
◆六四天安門事件wikiはコチラ

◆中国とアメリカの事を勉強しよう

中国の成長と大気汚染
中国の消費は米国を超える世界一の小売市場となりました。その一方で成長スピードに追いつけず『大気汚染、水質汚染、土壌汚染、産業廃棄物、 廃水』 といった公害が問題になっています。

『大気汚染』警告情報を流せば罰金5万元(約100万円)
中国では毎年、312万人もがんで死亡しており、その第一位がまさに肺がん。実は、過去30年で肺がんの死亡率は465%も上昇していて、理由は明白ですよね…。ですが、これが大気汚染のせいだーなんて情報を、ネットにアップしても15分程度でネット警察によって削除されてしまうそうです。さらに、中国では公的な気象台以外に、いかなる組織もしくは個人が、いかなる形式にせよ、社会に向けて気象に関する情報を発布することが禁止。違反者には、5万元(約100万円)の罰金が科されてしまいます。

中国とインターネット
中国政府はインターネットを使った政府批判の情報の流布を警戒し、それに対する管理を強化しています。例えば、ツイッターやFACEBOOKなどのSNSは完全遮断。共産党にとって都合の悪い歴史問題や歴史人物についての書き込み、デモの呼びかけは当然削除対象です。勿論、『天安門事件』に関する書き込みは削除です。

アメリカと中国人不法滞在と、結婚
観光ビザなどで入国、滞在期限が切れても帰国せずに米国に滞在しつづける『不法滞在』。アメリカの移民局がそれを察知すれば、当然国外退去処分が下されます。ただし、アメリカ市民との結婚により永住権を申請する場合、それまでの不法滞在歴は許されるようです。ちなみにNYは同性婚OKです。

アメリカ子育て事情
アメリカで一人子供を育てるのにかかる金額はおよそ$250000 (2500万円)。これは本当に大変…。男なんていらない!と言う女性も増えているそうですが…。シングルマザーの苦労は計り知れません。(日本のようなサポートはないんです)

アメリカのデモ
リーマンショック以来、世界中が不景気に喘いでいるのに、有効な対策を打てないアメリカ合衆国連邦政府に対する(主に中流層が抱く)不満が広がり、金融界の象徴といえるウォール街のデモが行われました。

文章で読んでおく?
カークウッドの話題作『チャイメリカ』翻訳が載っている『悲劇喜劇』。時間がある方は事前に読んでおくことで理解が深まるのでおすすめです。

チャイメリカとは?中国『天安門事件』と、その後の話

『CHIMERICA チャイメリカ』は、1984年生まれの英国の若手劇作家ルーシー・カークウッドにより劇作、2013年5月アルメイダ劇場で初演され、2014年ローレンス・オリヴィエ賞最優秀新作プレイ賞を含む5部門で受賞した社会派戯曲。ユーモアにあふれた軽快な会話劇でありながら、重大な歴史的事件を背景に、空間・時代を行き来する複雑な構造の本作に、日本を代表する演出家・栗山民也のもと、映像や舞台など多方面で幅広い活躍を見せる実力ある力強い出演者が挑みます。 公式HPより

簡単なストーリー

1989年、中国で起こった天安門事件。
当時、その現場付近のホテルに泊まっていた米ジャーナリスト ジョー(田中圭)は窓から見える景色に目を疑った。300人なんてとんでもない。物凄い数の人間が殺されている…。
日本からの電話を受けてそう訴えるジョーの目の前で、更に衝撃的な事が起きた。白いシャツを着て、買い物袋を二つ下げただけの無防備な中国人男性が、戦車の真ん前に立っていたのだ。凄い!なぜ彼はそんな行動をとったのだ?どういう思いで?これは抗議だったのか?

これが、ジョーが撮影した最高の写真。そして最悪の写真であった。

ジョーはこの写真に固執した。戦車の前で立ち尽くした『戦車男』彼こそがヒーローだと信じ、彼がその後どうなったのか、それをどうしても知りたかった。当時、中国は外国の報道機関を国から締め出し、自国の報道機関に対しては事件の報道を厳格に統制させた。誰も被写体の男“タンクマン(戦車男)”の現在を知るものはいないのだ。

ジョーは正義をかかげた。この謎に包まれた『戦車男』が誰なのか、これを記事にすれば沢山の人が救われるだろう?

そこで、中国人のヂァン・リン(満島真之介)の証言をもとに、周囲が止める手を振り払って、『戦車男』の情報を集めていく。

上司に逆らい
政治家を脅し
不法滞在者に暴力を振るい
友人達をないがしろにしながら…

結果、沢山の人の人生を壊した彼は、最後に真実を知るのだった。

ずっと求めていた『戦車男』は…、そしてその真実は。

チャイメリカの感想(ネタバレあり)

まずこの作品を英国の30代女性が書いたのかという強い衝撃を受けました。役者の演技力、熱量もさることながら、一番はとてつもない『脚本の力』に打ちのめされました。役者さんからは、この脚本に「絶対に振り落とされまい」「死んでも伝えてやるんだ」というような気迫を感じました。それだけでも見る価値がある舞台です。舞台だからこそ、打ちのめされる衝撃がここにあったと思います。

主人公、憎みきれないクズ男をやらせたら天下一の田中圭さん演じる、米ジャーナリスト ジョーは、観る人によっては不快感を示すのではないかというくらい、潔いクズっぷり。即物的で、自己中心的な人間です。それなのに、『ごめんな…こいつ、根っからの悪い奴ではないんだよ』と言いたくなってしまうのは、田中圭さんの人間力のおかげでしょうか。目の前の人に対しては、本当に大切に思っているし、愛があるんだと思います。しかし少し視界からはずれるともうその人の事を忘れている。着信があっても折り返さないし、相手がその後どうなろうと構わない。…というより想像ができないのだと思います。今自分のしたい事しか見えていない。そういうタイプです。

自分の『理想』に固執したあまり、彼の周りからは沢山の理解者がいなくなってしまいます。理想を追求する彼の『写真』は素晴らしいけれど、彼自身を評価する人は…どうなんでしょうか。1枚の写真で人生を狂わされたという点では、『ハゲワシと少女』の写真を思い出して、辛い気持ちになりました。何も言えねぇ。写真や彼を評価するのは結局は世間。ジャーナリストとは、そういうお仕事なのかもしれません。

そうして、彼の『理想』で、彼のヒーローである『戦車男』は、彼が写真を撮り、探し回り、そうやって追い詰めたばっかりに最終的には処刑されてしまうのです。救われない話です。『戦車男の袋の中身は何が入っているんだろう?』と考えられないジョーは、大切なものを沢山見落としてしまいました。戦車男の袋の中身には、必死に生きた人間の、悲しい思いや愛情が沢山詰まっていたのにね。まさに、過去の栄光にしがみつく『破壊神』。悲劇です。

実力派俳優田中圭、舞台の空気を掌握した満島真之介

実は舞台で田中圭さんを観るのは初めてでしたが、田中圭さんの迫力に圧倒されて、これが実力派俳優というものかと納得しました。生で見れてよかった…。
例えば、『怒鳴り声』。怒鳴り声って結構聞いている側からするとストレスで、ただ怖いとか、うるさいとか、耳障りに感じる事すらあるのに、田中圭さんの場合、そこに「切ない」とか「渇望」とか「今までの苦労」とか「今はいっぱいいっぱいなんだ」とかリアルな感情が乗るんですね。ただ怒鳴っているわけではないと言う説得力がある。だから、耳障りにはならない。これが本当に凄くて驚きました。
更に、女性の手を握る、顔を寄せる、そんな仕草で滲む色気や、ぱっと笑顔が出た時に劇場内の空気がぱっと明るくなる感じ!田中圭さんのファンが多いから(?)というのもあるかもしれませんが、すごいな!と。この人本当に凄い俳優さんなんだな。と改めて感じました。だから、ジョーが嫌いになりきれなかった。凄い。

そして、どの俳優さんも!!本当に素晴らしかったのですが、特筆すべきは満島真之介さん。
彼が今回の舞台のキーマンで、作品の空気は彼が作ったと言っても過言ではないのはないでしょうか。彼の役が違う役者さんだったら、舞台は全然違った色になっていたと思います。これは観た人にしかわからないと思うのですが、あの空気の重さ…。じっとりとした湿度。漂ってくる中国の香り。スモッグで霞む視界。室内は黴臭く、薄暗く、どこか血の匂いさえ滲んでくるよう。実際には見えない何かが、確かにそこにありました。田中圭さんを実力派と呼ぶなら、満島真之介さんは『魅せる』演技です。そこにない物を出現させる…。手品みたいに。

本当に素晴らしかったです。恐ろしい作品と俳優さんに出会ってしまったな。と感じました。

個人的には、ミュージカル化して欲しい…。

この作品は、これからも日本で上演されるのではないかと思います。個人的には、ストレートプレイも良いですし、ストレートプレイじゃないと伝わらないものって絶対あるし、この作品の重さは、今回のような形がマストだと…!それをわかったうえで言います。
『モーツァルト!』や『ドン・ジュアン』のように、ミュージカル化してくれーーー…。

クズ男と、その周りの方達の感情を描くのに、歌を使うっていうのは、ありだと思っていて!!!そうでないと重すぎて心がつらくて…!(笑)な!?
正直に言うと、次回公演があって、また、ストレートプレイで観に行くか?と言われると、ちょっと胃が痛くて見られません…。でも、本当に観てよかったと心から思っています。機会を与えてくださった田中圭さんに感謝。

最後に、『おっさんずラブ』から田中圭さんを知って観劇される方。私もそうですが!『過去の栄光にしがみつく〝破壊神”にならないで欲しい。』この作品を真摯に観て欲しいと、思います。ここに立つ彼は、ジョーであり、この舞台で使われた「結婚」という言葉。それが守られなかった意味は、もっと、ずっと、現実的で重いです。
「田中圭さんまた男性にプロポーズしたよ~」なんて笑い話にしないで、この作品をもっともっと、ぐっと腹の底に落として味わってほしいと、そう思いました。本当に素晴らしい作品でした!

以上、まもちゃでした。

世田谷パブリックシアター×パソナグループ「CHIMERICA チャイメリカ」

2019年2月6日(水)~24日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター

2019年2月27日(水)・28日(木)
愛知県 東海市芸術劇場

2019年3月2日(土)・3日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター

2019年3月6日(水)
宮城県 多賀城市民会館 大ホール

2019年3月9日(土)・10日(日)
福岡県 福岡市民会館

 

作:ルーシー・カークウッド
翻訳:小田島則子
演出:栗山民也
出演:田中圭、満島真之介、倉科カナ、眞島秀和 / 瀬戸さおり、池岡亮介、石橋徹郎、占部房子 / 八十川真由野、富山えり子、安藤瞳、阿岐之将一、田邉和歌子 / 金子由之、増子倭文江、大鷹明良

 

これ、ぽちりました。